とりずんだノート

の日記帳

独白するユニバーサル横メルカトル/平山夢明
を読んだ!

文体がすごくクセあるのに(自分の感覚だとあまり綺麗な文ではないと思うのに)気付いたら読み進めていたり、
どの話もグロテスクで悪趣味なのに描写のテンポ感はむしろ淡白であったり、
殺人者を主人公として取り上げそのさまに美しさを見出せそうというところに梯子を外され無様さを見せられたり、
なんとも不思議な読後感であった。

小説書けないから地の文を参考にしたい…と積んでる商業小説を手に取ったのだが、この方の文体…たぶんかなり亜流の方だよな?
小説、自由すぎる。でも読めて良かった。

以下ネタバレ配慮しない一言感想



ニコチン:子供の視点で急に説明的な筆致が入るとコワイ!初手で文体に慣れていないのもあり混乱しながら読んでた。掴みにおいたのもなるほど。振り返ってみても理解できない怖さがある。

Ωの聖餐:脳を食べさせる後半の下りからオチ含めて結構好き。「ズリズリと音を立てた」のためにスナギモひいては部位シリーズの名前にしただろ!と思うのに、狙い通り印象に残る一文で悔しい。

無垢の祈り:これ目当てに本作を手にした。引き算の勇気がすごい。殺人犯と少女の邂逅のシーンは絶対ちゃんと書きたいやつだろうに。なるほど唸る。これ主人公生き延びたら辛いなぁ。

オペラントの肖像:一目惚れも感動も条件反射である、の空恐ろしさは伝わる、が、響くまでには至らなかった。蹴破るのもまた条件反射だったのなら救われるだろうか、逆に虚しいだろうか。

卵男:うーんそんなにかなぁ。オチが響かず。ただ、余裕綽々の男と苦渋を舐める警官の構図で通すと思ってたから、途中で逆転したことに驚いた。グロテスクだけど露悪的に通さないんだなーと。全編共通して殺人者側に良い思いさせないよな。

すまじき熱帯:わたし熱帯を描いた作品ダメやー。神秘性と衛生観念の通らなさと環境や動物の恐ろしさで、描写以上に嫌な気分が高まってしまう。天使の囀りも猿食シーンのくだりきつかったし。 内容自体はえぐみしかない。なんだよこの話!不条理ギャグ的な感じなのか。

独白する〜:表題作。これが一番好き。長々くどくど地の文の似合う人外倫理主人公が楽しい。するっと読めた。オチも良い。

怪物のような〜:えぐい拷問の話なのに描写の温度感とオチ含めた読後感の良さが不思議で面白かった。観覧車のアベックは本当に可哀想。

タイトルセンスは素直に好き。畳む


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