とりずんだノート

の日記帳

容疑者xの献身を読んだ!

物語の展開に合わせた地の文の配分、素晴らしいなあ
捜査シーンや会話シーンなんかは必要最低限の文で進めて、大事な描写や後半の畳み掛ける展開の時は地の文の配分が増えて、読み返した時にあーこここういうことかあとなったり、山場として感情畳み掛けてくる役割を果たしていたり、勉強になる…。

読んでから一日経ったのでこんな感想が出てくるが、読んでいる時は中〜後半からかなり涙ズビズビだったし読了第一声は「辛い……」だった
どうしてこんなひどいはなしかくの…(え?)

以下ネタバレ的なざっくり感想

石神がどんなに完璧な理論で外から事件の隠蔽に手を尽くしても親子の罪と罪悪感は消えない…忘れてと言ってその通り忘れられる訳がないし、例え被害者がクズでも殺した罪悪感と石神を巻き込んだ罪悪感から逃げられないような良心をもった善良な人だからこそきっと…石神が快いと一目で救われて…ただ生きていることに祝福を祈っていたのであろうし……
石神がシンプルに論理的に生きているからこそ、親子の善良性を考えればそもそも殺人が起こった最初から詰んでいたことに…それに石神が気付けていなかったというのが…本当に辛い あるいはそこに数学者としての石神が顔を出していたのか…

正直途中の工藤さん追いかける石神のくだりは(嫉妬燃え始めててちょっと気持ち悪くなってるな…?)と見事に思っちゃったんだよ!!なので自供シーンで大ダメージ食らった 何もかも布石だった 石神の自供読んで涙が出てきて 後半ダバ泣きで
後半辛い どうしてこうなってしまったの 皆辛い…………
どんなものにでも数学を見出していけると投獄の石神の穏やかな心中とは一転、最後のシーンの完璧な証明と隣人の幸せと両方壊れてしまった石神の叫びがあまりにも救いがない これが人を殺した罰なのか……

あと他人の感想見てはっとしたが、四色の塗り分けの理論が"お隣さん"の石神と花岡にかかってくるの辛いな?これに限らず会話の布石の巻き方と回収の仕方がうまいなあ…

意図的なのか娘さんの心理からカメラが離されていたので彼女の気持ちは妄想するしかないが、娘さんの立場からすると取り巻く全てが重たくて最後のオチが辛い あれ成功してても失敗しててもこれからどうすんの…という苦しい絶望しかない 
娘さんから工藤さんひいては母への嫌悪、すごいよく分かる
工藤さん本当に良い人なのは分かるし読んでて工藤さんの優しさにほっとはしてたんだけど、結局妻のがんを見逃してたのと同じように花岡さんの異変に首を突っ込もうとしない節穴アイと性根してるから なんか どうしようもないな…事件が無かったとしても花岡さんに幸福をもたらしたのかはちょっと自信無いぞ

途中までの「草薙さん頑張ってくれ」「でも石神さんも花岡さんも逃げおおせてくれ」の二律背反を楽しめたし、事件の仕掛けも気付かなくて素直に驚かされた
湯川と草薙の距離感、草薙の刑事としての一線も良かった

とにかく石神の言動に心乱された…けど、どんな意図があったとしても犯してはならない罪を犯したのだ、という冷徹な視点が存在しているからオチがああなったのだろうし、報いがあったからこそ石神に好感を持ったままでいられるのだと思う。でも辛い…。

流石に有名作なだけはある、と言いたくなるすごく面白い本だった。でもこれを泣ける本って言うのはぶっとばしますよ!!確かにめちゃくちゃグスグスしながら読んだけど!!!
東野氏の他作品も機会があれは読みたい!畳む


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